2013年3月2日土曜日

「当たり前」は当たり前じゃない

私はね、昔、運送会社を経営してたんだよ。

まだ景気の良い時代に佐川の下請けで儲けて、仲間と会社を作った。
同じように一匹で下請けをやってた人たちを組織して、20人くらいの人を動かしていた。
同業者の中でも桁の違う売上げを誇って有名になったもんだよ。
ウチで仕事をしたいって人が、他業者からどんどん流れてきて、最大の時は40人くらいいたかな。

でも、ちょうど今くらいの時期だった。
下請けさんの一人がある日、過労で仕事場で私の目の前で亡くなったんだ。
そっからだね。お金儲けしか眼中に無かった私が、
生き方ってなんだろうって真剣に考えるようになったのは。

元請に呼び出されて「人間らしい生活をしなさい」って説教されて、
「遺族に訴えられないように手回しを怠るな」って言われて。
そりゃそうさ。朝は5時から夜は11時まで365日お休みも無く働いてたんだもん。

亡くなった人だけじゃない。私もそうだった。
代わってほしくても私の代わりが務まる人はいなかったし、
20人とその家族の生活を背負ってるし、
「もう一生この生活から逃れられない」って思ってたから、
辞められた時はホントに嬉しかったねぇ。

もうお金なんか要らない。
こころが震えて喜べることをして生きていきたいって思った。

若い時は、時給で仕事をするなんて、時間を切り売りするようで馬鹿にしていたけど、
今、アルバイトしながら、
「内容に関わらず時給がもらえる有り難さ」とか、
「会社に行くだけで仕事がある有り難さ」とか、
「日曜日には仕事を忘れてお休みできる有り難さ」とか、
ヒシヒシと噛み締めて喜べるんだよね。

普通の人には当たり前のことが、私にとっては当たり前じゃなくて、
それだけで幸せを人一倍感じることができるんだよ。
貴重な体験をした。本当にそう思う。

石井さん、ありがとう。
あなたのお陰で今がある。
もう一度こころからご冥福をお祈りします。

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